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特定社債保証制度とは

特定社債保証制度とはどのような制度か。

特定社債保証制度は、中小企業者が資本市場から直接事業資金を調達するために発行する社債(私募債)について、信用保証協会が金融機関とともに保証を行い、中小企業者に対する事業資金の調達の円滑化を図ることを目的とする制度である。

社債(私募債)を信用保証協会が金融機関とともに保証

(1)制度創設の背景
中小企業金融においては、従来の間接金融が抱える諸問題の解決策として、資金調達の多様化へ対応するための新たな金融手法が求められてきた。しかし、中小企業が直接資本市場から資金調達をすることは信用力が乏しいなどさまざまな問題があった。そこで、信用保証協会の保証制度を活用して、中小企業者が発行する私募債に対して信用補完を行い直接金融の道を開くこととされ、平成12年4月、特定社債保証制度が創設された。

(2)本制度の特色
①適債基準
特定社債保証制度では、発行体について財務要件等の一定の資格要件が設けられている。この要件のことを「適債基準土といい、投資家保護と社債に対する信用維持の観点から設けられているものである。本制度以外の社債についても設けられているのが一般的であるが、本制度は中小企業者向けであることから、一般的な適債基準よりも大幅に緩和されている。

②部分保証
次に、本制度では社債元本および利息の80%を信用保証協会が保証する部分保証となっている。本制度も責任共有制度の対象となっているのであるが、本制度は負担金方式を採用する金融機関との関係でも、一律部分保証とされている。

③共同保証方式
さらに本制度の大きな特色として金融機関が100%の保証責任を負い、信用保証協会と共同保証方式をとることが挙げられる。これにより社債権者は、信用保証協会および金融機関等により100%保全された私募債を保有することになり、リスクを回避することができる。また、デフォルト時には、信用保証協会が80%の負担部分について先行もしくは同時に保証債務を履行することとしていることから、金融機関においては実質的には20%の負担となっている。

(3)対象となる社債
本制度で対象としている社債は、中小企業者が当該事業の用に供する資金調達のために別に定める社債要項に基づき発行される社債(金融商品取引法2条3項に規定する有価証券の私募によるものに限り、社債、株式等の振替に関する法律66条1号に規定する短期社債を除く)であって中小企業信用保険法施行令1条の4に定める金融機関が引き受けるものに限定している。

(4)保証限度額
保証限度額は4億5,000万円である。ただし、経営安定関連保証を除く普通保証、無担保保証と合計で5億円か限度となっている。なお、本制度は80%の部分保証であることから、発行限度額は5億6,000万円となっている。また、1回の最低発行額は3,000万円である。

(5)保証期間
保証期間は2年以上7年以内となっている。

(6)担保・保証人
原則として、保証金額2億円を超える場合は有担保となっている。担保徴求する場合は、信用保証協会が担保徴求しなければならない。被担保債権は社債権ではなく、求償権となる。保証人は共同保証人たる金融機関のみである。したがって、代表者の個人保証も徴求してはならない。

棚卸資産を換価処分するのはどのような場合か

棚卸資産を担保徴求して流動資産担保融資保証制度を取り扱い、債務者が返済困難となった場合において、棚卸資産の換価処分はどのようなタイミングで行わなければならないか。また、処分にあたってどのようなことに留意しなければならないか。

棚卸資産の換価処分のタイミングは、債務者の事業の継続性を勘案し、慎重に検討しなければならないが、債務者が民事再生手続または会社更生手続の申立をした場合を除き、原則として代位弁済前に換価処分しなければならない。処分にあたっては、保全処分の中立をするなど、在庫が散逸しないよう留意する必要がある。

原則として代位弁済前に換価処分を行う

(1)棚卸資産の換価処分
譲渡担保として徴求した棚卸資産の管理および換価処分については、金融機関が金融機関および信用保証協会双方を代表して行わなければならない。棚卸資産の換価処分は、申込人が民事再生手続または会社更生手続(再建型法的整理手続)の申立をした場合を除き、原則として信用保証協会の代位弁済前に行うこととしている。ただし、棚卸資産を処分すれば、事実上の廃業となってしまうことから、事業の継続可能性を考慮して判断しなければならない。

(2)棚卸資産の占有確保
棚卸資産に譲渡担保権を設定した後も、基本的には担保提供者が棚卸資産を占有し続けるため、換価処分を行おうとした時には既に散逸、滅失、毀損等が生じている危険性がある。したがって、譲渡担保権者としては、できるだけ迅速に棚卸資産の占有を確保する必要がある。担保提供者が棚卸資産の引き渡しに任意に応じないときは、所有権に基づく引渡請求訴訟を提起する方法が考えられるが、時間がかかるのが難点である。

このため、保全処分の申立てを行うことが有効となる。具体的には、①占有移転禁止の仮処分、②処分禁止の仮処分、③引渡断行の仮処分などを検討する。なお、これらの保全処分が発令されたとしても執行までに要する時間は4~10日程度かかるため、その間の散逸を防ぐ必要があることから、費用対効果を勘案したうえで、倉庫の出入口にトラック等を置いたり、警備員を配置する等の対応も検討する必要がある。また、これらの手続によることなく譲渡担保権者が自ら棚卸資産を搬出するようないわゆる自力執行は、窃盗罪を構成する場合があるため留意が必要となる。

(3)換価処分の方法
換価処分の方法としてまず最初に行うべき方法は、担保提供者の取引先に従来どおりの方法で買い取ってもらう方法である。本制度用の流動資産譲渡担保契約書には、権利実行に関する協力義務が規定されており、担保提供者は金融機関または信用保証協会からの求めがあるときは、協力しなければならない義務を負っている。この方法によると、買い手を探す手間を省くことができるうえに、適正価格で処分できる可能性が高くなる。この方法によることができないときは、処分ルートを有している専門の事業者等に依頼して処分を行うことも検討しなければならない。

(4)処分費用が回収金の額を上回ることが見込まれる場合
棚卸資産の処分に多額の費用を要し、その費用が回収金の額を上回ることが見込まれる場合は、費用倒れとなる。そのような場合には、本制度では金融機関および信用保証協会は、棚卸資産の譲渡担保権を行使しない旨の意思表示をすることができることとしている。この意思表示をしたときは、棚卸資産の所有権は債務者に復帰的に移転することとなる。この場合、金融機関および信用保証協会は、棚卸資産を適正な方法をもって債務者に戻さなければならず、誤っても第三者の所有地に放置する等してはならない。廃棄物となった物を自らの責任をもって適正に処理しなければ、違法となるため留意が必要となる(廃棄物の処理及び清掃に関する法律3条1項)。

売掛先に対する債権譲渡通知はどのような場合に行うか

流動資産担保融資保証制度の根保証につき、売掛債権譲渡の対抗要件を登記(通知留保)により取り扱った場合、動産債権譲渡特例法に基づいて売掛先に通知しなければならないのはどのような場合か。

申込人につき期限の利益喪失事由が生じたときや、売掛先に破綻事由が生じたときは、動産債権譲渡特例法に基づいて売掛先に対して通知しなければならない。

利益喪失事由・破綻事由が生じたときは通知が必要

(1)動産債権譲渡特例法に基づく登記
債権譲渡の対抗要件としての登記(通知留保)は、債務者以外の第三者との関係について対抗力を認めるものである(動産債権譲渡特例法4条1項)。しかし、登記(通知留保)のみでは、売掛先に対して債権譲渡を対抗することはできない。つまり、第三者対抗要件と債務者対抗要件が分離されている。これにより、本制度の申込人は第三債務者に知られることなく債権譲渡の第三者対抗要件を具備することができる。債権譲渡による信用不安を懸念する申込人にはこの点でメリットがあると言える。

(2)売掛先に対する通知
債権譲渡について登記(通知留保)を具備した後、譲受人が売掛先に対して売掛金の請求をしようとするときは、売掛先に対し登記事項証明書を交付して通知しなければならない(動産債権譲渡特例法4条2項)。なお、同一の売掛債権につき二重譲渡を受けた者が売掛先に対抗要件としての通知を送付し、特例法4条2項に基づく通知が到達する前にこの通知が到達したときは、売掛先との関係では先に通知が到達した譲受人が優先することとなる。

二重譲渡との関係で言えば、特例法4条2項に基づく通知は早期に発出することが望ましいと言えるが、一方、当該通知を発出すれば、申込人の信用不安を惹起するおそれがあることから、そのタイミングは慎重に検討しなければならない。そこで、本制度では表のような事由が生じたときに、それぞれの事由ごとに定める通知先に通知しなければならないこととしている。なお、この通知は金融機関が金融機関および信用保証協会を代表して送付しなければならない。

(3)取立委任解除通知
本制度の根保証では、第三債務者からの売掛金の入金口座についでは申込人自身の口座とすることとしている。これはレ第三債務者に振込口座を変更してもらうのは、中小企業者の立場からすると取引先に迷惑をかけることになるからである。つまり、債権譲渡により売掛債権は金融機関および信用保証協会に帰属しているのであるが、取立権限を申込人に付与しているのである(取立委任)。

このような手法を採用した場合、債権譲渡の効力に疑義があるとする見解もあるが、最高裁はこのような手法は譲渡人に取立、消費権限を留保するという内部的合意が付加されているにすぎないとして、債権譲渡および第三者対抗要件の効力に影響を与えないものとしている。申込人に信用不安事由等が生じたことにより金融機関および信用保証協会が第三債務者に対して直接取立権限を行使しようとするときは、この取立委任を解除する必要がある。そのためには、第三債務者に対して取立委任解除通知を送付しなければならない。その通知事由および通知先については、前述の特例法4条2項に基づく通知と同様である。

貸越の一時中止や回収口座からの出金停止措置をとる場合

流動資産担保融資保証制度の根保証において、債務者に債務の返済が困難となりそうな事由が生じた場合、金融機関はどのような対応をしなければならないか。

第三債務者の破綻や取引の減少等、担保に瑕疵が生じることが前もって判明した場合や、債務者に延滞が生じた場合等、債務め返済が困難となるような事由が生じたときは、金融機関は新規貸越の一時中止や回収口座からの出金停止措置を講じなければならない。

債務返済困難時は新規貸越一時中止・出金停止措置を講じる

(1)新規貸越の一時中止
新規貸越の一時中止とは、当座貸越の極度枠に余枠がある場合であっても、一時的にその枠を利用できないこととする措置である。次に掲げる事由が生じたときは、金融機関は新規の貸越を一時中止しなければならない。

①信用保証協会から一時中止を申入れしたとき

②申込人に対する債権について、延滞もしくは事故報告書の提出事由が生じたとき

③申込人に対する他の貸付口につき延滞が生じたとき

④根保証に係る約定弁済期日において延滞が生じたとき、もしくは延滞が生じることが判明したとき

⑤保証条件とした根保証人について根保証の確定事由が生じたことが判明したとき

⑥その他取扱金融機関が相当と認めたとき
上記事由は主として延滞等、申込人自身に生じた事由を想定しているが、第三債務者の破綻により担保として徴求した売掛債権が弁済されないおそれがあるときや、取引の減少等により担保として徴求した在庫が著しく減少したとき等、必ずしも申込人自身に生じたとは言えない事由をも含んでいる。

なお、一時中止の事由が解消したときまたは信用保証協会と協議のうえ相当と認められたときは、一時中止を解除し、または一時中止をしないことができる。

(2)回収口座の出金停止
回収口座の出金停止とは、売掛金や棚卸資産の売却代金の入金口座として事前申告のあった口座(回収口座)にある預金について、金融機関の承諾なくして使用できないこととする措置である。次に掲げる事由が生じたときは、金融機関は回収口座の出金停止措置を講じなければならない。なお、出金停止の事由が解消したときまたは信用保証協会と協議のうえ相当と認められたときは、出金停止を解除し、または出金停止をしないことができる。

①信用保証協会から出金停止の申入れがあったとき

②申込人につき事故報告書の提出事由が生じたとき

③申込人に対する他の貸付口につき2回以上の延滞が生じたとき、もしくは期限一括返済の条件による貸付口につき延滞が生じたとき

④根保証に係る約定弁済期日において延滞が生じたとき、もしくは延滞が生じることが判明したとき

⑤その他取扱金融機関が相当と認めたとき
また、第三債務者の破綻により担保として徴求した売掛債権が弁済されないおそれがあるときや、取引の減少等により担保として徴求した在庫が著しく減少したときは、新規貸越の一時中止とは異なり、信用保証協会と協議のうえ出金停止措置を講じるか否か判断することで差し支えない。

期中管理のためのモニタリングはどのように行うか

流動資産担保融資保証制度の根保証による保証取扱開始後、金融機関は期中管理としてどのようなモニタリングを行わなければならないのか。

金融機関は、①回収口座への入金チェック(月1回以上)、②申込人からの譲渡担保流動資産報告書の徴求(3ヵ月に1回以上)、③事業所への立入調査(年1回以上)の3種類のモニタリングを行わなければならない。

期中管理は3種類のモニタリングを励行する
本制度の根保証では、個々の売掛債権を返済引当としているわけではないため、申込人が期中においてどの程度の売掛債権および棚卸資産を保有しているのか、売掛金や棚卸資産の売却代金がきちんと入金されているかどうかについて把握することが重要となる。モニタリングには、①回収口座への入金チェック(月1回以上)、②申込人からの譲渡担保流動資産報告書の徴求(3ヵ月に1回以上)、③事業所への立入調査(年1回以上)の三種類がある。

(1)回収口座への入金チェック
本制度の前身である売掛債権担保融資保証制度では、申込人に返済専用口座を開設してもらい、担保とした売掛債権の入金はすべてその口座に入金させることにより、売掛金の入金状況をチェックするとともに、当該口座にある預金と同制度に基づく貸付債権の相殺を優先的に行うこととしていた。このような仕組みは、回収の局面を考慮すれば有用なのであるが、これを開設することにより、第三債務者に振込口座を変えてもらうか、あるいは一旦第三債務者より振り込まれた売掛金を申込人自ら返済専用口座に移し替えるといった手間がかかり、制度運用上の障害となっているとの指摘があった。そこで、本制度ではこのような運用を見直し、原則として第三債務者が従来振り込んでいた口座にそのまま入金してもらうこととした。

申込人より事前にその入金口座(以下「回収口座」という)を申告してもらうことにより、取扱金融機関は月1回以上回収口座の入金状況のチェックをし、それが他行口座であるときは、申込人より預金通帳の写し等を提出してもらうことにより確認することとしている。なお、売掛金ばかりでなく棚卸資産の売却代金の入金口座についても同様の取扱いとしている。取扱金融機関はこのチェックにおいて、月商相当額と大幅な乖離がある等債権保全に支障があると見込まれるときは、ただちに信用保証協会に報告し、出金停止や貸越中止等の対応を講じるごとを検討しなければならない。

(2)譲渡担保流動資産報告書の徴求
申込人は、3ヵ月に1回以上、譲渡担保流動資産報告書を金融機関に対して提出しなければならない。金融機関は、この報告書により、棚卸資産の在庫の数量等や売掛債権の残高等についてチェックしなければならない。債権保全に支障があると見込まれるときは、ただちに信用保証協会に報告し、出金停止や貸越中止等の対応を講じることを検討しなければならない。

(3)事業所への立入調査
月次の入金チェックや譲渡担保流動資産報告書の徴求をしたとしても、棚卸資産の状況については実際に目で見て確かめることが重要である。本制度のもとでは、棚卸資産を担保としで取得した場合に限り、1年に1回以上金融機関の担当者が申込人の事業所に立ち入って、棚卸資産の状況を確認しなければならないこととしている。チェックポイントとしては、申込人が譲渡担保流動資産報告書により報告した数量と大幅な相違がないかどうか、不良在庫が過大となっていないか、保管場所が移動していないか等が挙げられる。この他にも異常を把握したときは、ただちに信用保証協会に報告し、出金停止や貸越中止等の対応を講じることを検討しなければならない。なお、保管場所が動産譲渡登記に記録した場所から移動している場合は、動産譲渡登記の対抗力が失われる場合もあることから、改めて譲渡担保契約を締結し、動産譲渡登記を具備する必要がある。

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